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前十字靭帯再建のリハビリと、日々のこと

繰り返されるテーマが美しくて怖い、傑作タクシー・ドライバー

鑑賞済みのマーティン・スコセッシの映画で一番古いものは『救命士』だったと思う。ニコラス・ケイジの疲弊しきった顔と狂っていく演技になんとも言えない気持ち悪さを抱いたのを強く覚えている。

『タクシー・ドライバー』も同様に、若き日のロバート・デニーロが戦争後遺症である不眠症に悩まされ、そして孤独や周囲との埋まらない溝との間で狂気を帯びていく姿を描いた、なんとも言えない気持ち悪い映画なのです。

 

ストーリー

ベトナム戦争から帰還したトラヴィスは戦争後遺症であろう不眠症に悩まされている。定職に就けない彼は、深夜のハーレム街を回るタクシードライバーになる。選挙事務所で働くベティーに恋をするも初デートでポルノ映画に連れ出しフラれ、激昂し事務所に乗り込み殺すぞと脅す。それだけにとどまらず、世間と自分の考えの溝を許しがたいトラヴィスの行動は除々にエスカレートしていく・・

 

ベトナム戦争というアメリカの為の戦いに命を捧げたのに、帰還すると守ってきた筈のアメリカは自分を受け入れてくれず、虐げられている。この国に貢献した自分はもっと評価されるべきだ!なのに世間には生きる価値もないどうでもいいクソ共がのさばっている。クソッ耐えられない!俺が浄化してやる!このクソどもめ!!

という、完全に中2病思想のトラヴィスのおはなし。

 

そんな中2病のお話でありながら、ストーリーの要に登場するこのテーマソング。

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物語の中盤までは、この美しいサックスの旋律がトラヴィスの行動とマッチしなくて、雰囲気系のオシャレ映画を観ているような、違和感を覚えます。

 

でもストーリーが展開して繰り返しこの曲が使われていくごとに、ふとこの音楽がトラヴィスの心を写しているのかな、と思う瞬間がある。

ラヴィスの行っていく理解不能な気持ち悪い行動の数々は、トラヴィスの中ではアメリカを浄化するための清い行為であり、彼なりの信念や美学にに基づいているとすると、このサックスの旋律の美しさは彼の狂気を表しており、狂気はトラヴィスの中ではこの旋律のような美しい哲学なのかもしれない。

 

終盤、若い売春婦アイリスを救うために乗り込み、悪党を全員殺した後にこのテーマが流れた時、最初は理解出来なかったトラヴィスの行動も、なんだか受け入れてきてしまっている自分がいて、このテーマが心底怖いと思った。

 

結果的に、気が狂うほど望んでいた、クソな社会への浄化を行い、その結果として他者からの尊敬を手にしたトラヴィス

アイリスの両親や、世間からかれの行動を過大に評価されたことで、ようやく自分の理想と、現実との均衡を受け入れ始めたトラヴィス

 

エンドロールに向かってのラストシーンで流れるテーマソングからは、今までのトラヴィスが持つ内面の狂気は感じず、少し平穏でいて、何かを諦めたような、狂気のトゲが抜けた、肩の力が抜けた様なそんな様子を感じます。

 

このテーマソングが本当に効果的に使われていました。

 

もう一つ、少女娼婦を演じた当時13歳のジョディ・フォスターの怪演もすごい。

大人びた風貌と、中身のギャップ。凄く良く演じているなあ。

 

音楽、出演者、ストーリー、どれをとっても傑作としか言いようがありません。

 

 

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